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生物学科 植物生態学研究室 丸田 恵美子 教授

森林限界やブナ林をフィールドワーク
植物の生態や生理機能の解明に取り組む

いかなる生物も環境に影響を与え、環境から影響を受けている。そのなかでもとくに植物と環境との間の相互作用を研究するのが植物生態学だ。ある場所とある種類の植物が環境とどのような関係を持っているか、他の植物との相互関係、昆虫や動物との関係、あるいは地域環境の保全など、さまざまなアプローチが行われているが、「今、植物生態学の発言権は非常に大きくなっているのです。」と丸田恵美子教授は語る。
それは、絶滅危惧種や里山など生態保全はもちろん、国際政治や外交政策において重要なCO2問題にも密接に関わっている学問分野だからだ。CO2削減目標の設定には、森林のCO2吸収能力を見極める必要があるが、その基礎データを集めるのも植物生態学の役割の一つとなっている。
「非常に広がりのある植物生態学の世界ですが、私自身が取り組んでいるのは森林限界や亜高山帯に生息する植物の研究です。」
たとえば、日本ではおおよそ標高2200~2500mが森林限界となっているが、そのような場所では冬の寒さは厳しく、土壌は凍結し、木は水を吸い上げることができなくなる。しかも風速30m近い強い偏西風が吹くため、氷や砂が飛んできて枝に傷がつく。できた傷から水分が放出し、ついには風上の枝は枯れはて、風下の枝だけが伸びた木となる。
「それが『風衝木』と呼ばれるものですが、このように、非常に強い環境ストレスを受けながら木がどのように生きているのか、木と厳しい環境がどのような相互関係を持っているのかを探ることによって森林限界ができる原因の解明を試みるのが私のテーマ。富士山や八ヶ岳、北アルプスなどでフィールドワークを行っていますが、最近気がかりなのは、北アルプスの森林限界が上がってきているのではないかということ。まだまだ謎が多く、少し長い歴史的な動きを含めて、調査を始めたところです。」

樹木に刻まれた歴史から現在、そして未来を考察する

山好きが高じて植物生態学の世界に飛び込んだという丸田教授だが、研究室の学生に与えるテーマは、森林限界や亜高山帯の植物に留まらない。学生が興味を持てるものをと考え、注目したのがブナ林だった。
ブナ林は日本、北アメリカ、ヨーロッパなど近代文明の発達した地域が分布地となっているため、原生林がわずかしか残っていない。そんななかで日本では、世界自然遺産に登録された白神山地に代表されるように、日本海側を中心に世界有数のブナ林を維持しているのだという。
「ただ太平洋側のブナ林は非常に衰えが目立ちます。現在残っているブナの多くが江戸時代に生えたもので、明治以降の木はほとんど残っていない。世代交代がうまくいっていないのです。その原因を探るため続けているのが、富士山のブナ林で自然発芽した芽の追跡調査です。」
あるシミュレーションによると、温暖化が進めば、現存するブナ林はほとんど消滅し、生息エリアの南限が北海道になるのではないかとの予測もある。温暖化の影響は、木がすぐにバタバタ枯れるというわけではなく、後継ぎの木が生えなくなるために森林が衰退していくという形になって現れることから「非常にロングスパンで変化を追いかけなければならないところが、森林研究の難しさ」とも丸田教授は語る。
「しかし、木は環境の作用を自身の形に表しています。過去にどんなことがあったか、年輪を見ればわかります。1本の木を追うことが、そこに刻まれた歴史を追うことにつながるというおもしろさ。さらには調査研究の結果から、社会へ警鐘を鳴らすこともできます。学生の皆さんには、ぜひこの研究室で、その醍醐味を味わってほしいですね。」

丸田 恵美子 教授

プロフィール

丸田 恵美子 教授
神奈川県出身。
東京大学理学部生物学科卒業。
同大学院理学研究科博士課程単位取得退学。
東京大学理学部助手期間中に博士号取得。
その後、気象庁海洋気象部調査官、慶應義塾大学環境情報学部助教授を経て、1994年、東邦大学助教授に就任。
2007年4月より教授、現在に至る。
神奈川県自然環境保全審議会委員、気象庁気候問題懇談会委員。

丸田教授から一言

研究を通して将来への自信を身につけてほしい

本学には生物が大好きな学生が集まっていると感じますし、自分にピッタリのテーマに出会うと、研究に取り組む姿が本当にイキイキしています。ですから私は、個々の学生の興味や適性をじっくり見ながら研究テーマを与えるよう心がけています。最近の例では、高山の雷鳥を研究した成果が認められ、環境アセスメントの会社に就職した学生も出てきています。将来どんな分野に進むにしても、一生懸命研究に打ち込んだ経験を自分自身の財産として、役立ててくれたらと思っています。

学生から一言

小宮 英之さん

大学院理学研究科 生物学専攻 博士前期課程2年
ブナとミズナラの水の利用効率を研究しています。調査や実験によって自分の目で植物の特徴を確かめられるところに、とてもワクワクします。丸田先生に勧められて始めた研究ですが、先生は一人ひとりの学生の持ち味を理解して、テーマを与え指導をしてくださっていると感じますね。

雛田 基希さん

生物学科4年
それぞれの研究テーマによって、学生のフィールドワークの場所が異なるため、帰ってくるとお土産話で盛り上がります。丸田先生は、その輪の中に気さくに入ってこられるので、研究室の雰囲気は和気あいあい。所属学生の男女比率が6:5と、バランスがいいのもこの研究室の特徴だと思います。

丸田教授の研究室サイトはこちらから

東邦大学理学部 生物学科 植物生態学研究室

2010年1月号TOHO NOWより引用